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ボツ個展
String Instruments at Night
At last, the chirping of crickets has faded away, and the long, undisturbed nights of early winter have arrived. When I wake in the middle of the night and turn off the radio whispering in my ear, I hear a sound coming from afar. Is it a cello, a viola, or a violin? The vibrations of strings being plucked by someone carry an uncertain melody through the darkness. It is by no means a pleasant sound. It echoes high and low in the clear night sky, disturbing my sleep.
But I am not afraid of sleepless nights. When I go outside and look up at the night sky, the moon shines white, casting a deep blue light onto the tips of the plants damp with night dew. I strike a lighter and light my cigarette. White breath trails after the purple smoke I exhale. The night’s chill is utterly merciless, sapping my vitality.
Who is playing that stringed instrument, producing such a mysterious melody? Is it a cellist from a band that came from the farthest reaches of a distant continent, now lost? Or perhaps a wandering violinist who missed the ship bound for the south? As long as the night continues, no one will ever know their true identity.
The winter corridor will soon open, and the wielders of white weapons―unwelcome in the northern lands―will arrive. I shut myself away in my square room, plug my ears, and let my thoughts drift to the night of March―the Purification Moon in Japanese, when they will have departed. By then, surely the melody of that mysterious stringed instrument will have faded as well.
ボツ個展
「夜の弦楽器」
いよいよコオロギの鳴き声も聞こえなくなって、誰にも邪魔をされない初冬の夜長がやって来ました。夜中に目が覚めて耳元で囁くラヂオを消すと、遠くから音が聞こえてきます。それはチェロかビオラかヴァイオリンか、誰かがはじく弦の振動が、闇を縫って不確かな旋律を運んできます。けっして心地のよい音ではありません。澄んだ夜空に高く低く反響し、わたしの眠りを妨げます。
けれど眠れぬ夜など怖くはありません。外に出て夜空を見上げると、月は白く輝き、夜露で湿った草木の先に群青の光を投げかけています。わたしはライターを擦って、タバコの火を灯します。吐き出した紫煙のあとを白い吐息が追いかけます。夜の冷気はまったく容赦がなく、わたしの生気を奪っていきます。
不思議な旋律を奏でる弦楽器を弾いているのは誰なのでしょう。遠い大陸の果てから来た楽隊の、道に迷ったチェリストでしょうか。それとも南行きの船に乗り遅れた流しのヴァイオリニストでしょうか。夜が続く限り、その正体は誰にもわかりません。
冬の回廊はもうじき開かれ、北の国には歓迎されない白い凶器の使い手たちがやってきます。わたしは四角い部屋に閉じこもり、耳を塞いで彼らが去っていく祓月の夜に思いをはせます。そのころにはきっと不思議な弦楽器の旋律もやんでいることでしょう。
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プランカ Planca
挿画やデザインを担当。デジタルツールを使いこなせなくて困っている、超アナログ人間。
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