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さらば、男のキムチ納豆
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いまはもう手に入らない追憶の一品から。
「おはよう納豆」でおなじみのヤマダフーズ。納豆発祥の地の一つとされる秋田県横手市金沢からほど近いところに本社を構え、のどかな田園地帯に囲まれた国道を走っていると、秋田おばこ「なっちゃん」の看板と大きな社屋が目にとまる。「男のキムチ納豆」はそのヤマダフーズが販売する、スティック状の袋入り味付け納豆である。
オンラインショップではたしか十本入りで販売していたはずだが、道の駅三本木に行くと、それを二個ずつ小分けにして百円で買えるようになっていた。先日この写真が出てきて、それでひさしぶりに食べたくなったのだが、インターネットで調べると、なんとヤマダフーズのホームページでは「販売終了」の案内が出ているではないか。
キムチ調味料で小粒納豆を和えたものだから、ふつうの納豆を買って自分で作ろうと思えば作れる。けれど最初から調味されていて、それを少量で食べられる手軽さがありがたかったのだ。

じつは私が目論んでいたのは、これを使って盛岡市の名店「柳家」風のキムチ納豆ラーメンを自宅でも作れないものだろうか、ということだった。もちろん、本家はあの味の感じからして、納豆をすりつぶしたものをスープ自体に溶かし込む「納豆汁」仕様であることは想像できる。ふつうの味噌ラーメンに納豆をのせただけでは、柳家の味には遠く及ばないことも承知している。でも、そのために往復二時間かけて店に出向いて、長い行列に並んで食べるしんどさを思えば、たとえ偽物であってもインスタントのサッポロ一番が柳家風に激変するということだけで気分が上がるじゃないですか。
けれど、その野望はあっけなく途絶えた。だからさ、自分でキムチ納豆を作れば再現できるよって言われても、封を切って麺にのせたらそれで終わりという手軽さがほしいのだ。それであってこそのキムチ納豆「インスタント」ラーメンであり、昼飯とはそういうものなのだ。
手軽さを犠牲にしてそれがいくら美味かったとしても、なんか満足感に割引が入ってしまう。面倒くさがりな男の料理、男の昼飯とはそんなものだ。時代錯誤かもしれないけれど、だからこその「男の」キムチ納豆だったのである。私はそう解釈している。
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塵野三月 Mitsuki Jinno
当サイトの文章とデザインを担当するインドア派。
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